はじめに
国際政治リスク分析で知られる「ユーラシア・グループ」が、2026年に世界へ大きな影響を及ぼしうるテーマとして「世界10大リスク」を発表した。本リストは相場予測ではなく、政治・経済・技術・資源を横断した構造的リスクの整理である点に特徴がある。
本記事では、ユーラシア・グループが提示した世界10大リスクについて、それぞれの背景と投資家目線での注目点を分かりやすく整理する。個別ニュースとして消費するのではなく、「世界の前提条件がどう変わりつつあるのか」を理解するための読み方を意識したい。
重要なのは、個々の出来事に一喜一憂することではなく、複数のリスクが同時に進行する世界を前提に投資戦略を考えることである。
① 🇺🇸 米国の政治革命
米国では政治体制そのものが大きく揺れ動いており、従来の政策連続性が前提とならなくなっている。政権交代や国内分断が、金融政策・財政政策・外交方針にまで波及し、市場の予見可能性を著しく低下させる。
投資家にとって最大のリスクは、政策内容よりも「急な方向転換」が常態化する点にある。


米国リスクは中身よりもスピードに警戒したい。
② 🇨🇳 「電気国家」中国
中国はEV、電池、再生可能エネルギーを国家戦略の中核に据え、「電気国家」への転換を進めている。一方で、この分野への過剰投資は価格競争や収益性の低下を招きやすい。
世界の製造業や資源市場に与える影響は大きく、中国一国の問題では済まない。


成長戦略がそのままリスクになる典型例である。
③ 🌎 ドンロー主義(米国の覇権再定義)
米国が従来の国際秩序維持役から、自国利益を最優先する姿勢へと明確に舵を切るリスクである。同盟国への関与低下は、地政学的不安定化を招く。
市場は「米国が必ず支える」という前提を修正せざるを得なくなる。


覇権の再定義は市場の前提を書き換える。
④ 🇪🇺 包囲される欧州
欧州は安全保障、経済、政治の各面で外部からの圧力にさらされている。米国の関与低下や周辺地域の不安定化により、域内の結束が試される局面が続く。
ユーロ圏の成長鈍化は、世界経済全体に波及する可能性がある。


コメント:欧州リスクは静かに効いてくる。
⑤ 🇷🇺 ロシアの第二戦線
ロシアは軍事・非軍事の両面で新たな対立軸を形成しつつあり、エネルギーや食料市場への影響が懸念される。直接的な戦闘以上に、間接的な経済混乱が問題となる。
地政学リスクが長期化する前提で考える必要がある。


コメント:ロシア要因は長期戦を想定すべきである。


⑥ 🏛 米国式国家資本主義
米国は自由市場を重視しつつも、戦略分野では国家が深く関与する姿勢を強めている。補助金や規制を通じた産業政策は、市場の公平性を歪める可能性がある。
企業価値は競争力だけでなく、政策との距離感にも左右される。


市場原理だけでは読めない時代である。
⑦ 🇨🇳 中国のデフレ
中国では需要低迷と価格下落が同時に進行しており、デフレ圧力が強まっている。これは国内問題にとどまらず、輸出価格や世界の物価動向にも影響する。
デフレは静かだが、最も抜け出しにくいリスクの一つである。


デフレは時間差で世界を侵食する。
⑧ 🤖 ユーザーを食い尽くすAI
AIの急速な普及は生産性向上をもたらす一方、ユーザーや労働市場を疲弊させる可能性も指摘されている。収益化競争が激化すれば、消費者負担が増す局面もあり得る。
技術革新が必ずしも社会全体の利益につながらない点に注意が必要である。


AIは万能ではなく、調整コストを伴う。
⑨ 🚚 USMCAのゾンビ化
北米自由貿易協定(USMCA)が形式的には存続しつつ、実質的な機能を失うリスクが指摘されている。保護主義の台頭は、サプライチェーンの効率を低下させる。
北米経済圏の不安定化は、世界貿易全体に影響する。


協定は生きていても機能しないことがある。
⑩ 💧 水の武器化
水資源の不足や管理を巡る対立が、国家間・地域間の緊張を高める可能性がある。水はエネルギーや食料と同様に、戦略資源としての性格を強めている。
長期的には農業、エネルギー、インフラ投資にも影響を及ぼす。


水問題は表面化した時には手遅れになりやすい。
投資家は何に注目すべきか
10大リスクに共通するのは、単独ではなく同時進行する点である。投資家は特定テーマへの集中ではなく、分散と柔軟性を重視すべき局面にある。
資産配分、流動性、過度なレバレッジ回避といった基本戦略の重要性が、これまで以上に高まっている。


リスク時代ほど基本戦略が効いてくる。
まとめ
「2026年 世界10大リスク」は、恐怖を煽るリストではなく、世界の前提条件が変化していることを示す警告である。政治・経済・技術・資源が複雑に絡み合う時代においては、単純なシナリオは通用しない。
10のリスクを理解した上で、自身の投資方針を点検し、想定の幅を広げておくことが、投資家にとって最も現実的な備えとなる。

