窓口負担は本当に安くなるのか?
「マイナ保険証を使えば医療費が安くなる」といった情報がしばしば見受けられるが、現在の制度ではそのような単純な構造ではない。2024年12月2日以降、「紙の保険証」の新規発行が終了したことに伴い、医療機関での加算制度が見直された。
従来は「医療情報取得加算」として、紙の保険証では初診3点、再診2点、調剤3点とされていたが、これが一律1点(10円)に統一された。つまり、マイナ保険証でも紙の保険証でも、窓口での負担に大きな差はなくなっている。
「医療DX推進体制整備加算」とは何か?
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを活用して、質の高い医療提供を可能とする体制を整えている医療機関を評価するための新設加算である。
2024年10月より、医療機関の「マイナ保険証」利用率に応じて「加算1」「加算2」「加算3」の三段階に分類され、初診時に加算される点数が異なる。たとえば、最も高い「加算1」では11点、つまり110円の加算が発生する。なお、これは医科・歯科・調剤により異なる。


マイナ保険証を利用することで窓口負担が必ずしも減るわけではなく、場合によっては初診時に上乗せが発生するケースもあるのが実情である。
高額療養費制度との連携で真価を発揮
マイナ保険証の本領が発揮されるのは、窓口負担が安くなる場面というよりも「高額療養費制度」の活用にある。
この制度では、医療機関での支払いが月ごとの自己負担限度額を超えた際、超過分が後から払い戻される仕組みであるが、「限度額適用認定証」の提示が必要であった。
しかし、マイナ保険証を用いたオンライン資格確認が可能な医療機関であれば、この認定証の提示が不要となる。これにより、入院や高額治療が必要な場面でも、初回から自己負担限度額を超える金額を一時的に支払う必要がなくなる。


その他のメリットと留意点
診療情報の共有
マイナ保険証を活用することで、医療機関同士での診療履歴や薬剤情報の共有が可能になる。これにより、重複投薬の防止や治療方針の一貫性が保たれるなど、医療の質が向上する。
保険資格の確認がスムーズ
転職や引っ越しで保険証の切り替えが発生した場合でも、マイナ保険証を使えばリアルタイムで資格確認が可能であり、受付でのトラブルを減らせる。
利用登録と機器の対応状況
マイナ保険証を利用するには、マイナポータル等で事前の利用登録が必要である。また、すべての医療機関がマイナ保険証に対応しているわけではないため、事前確認も重要である。


まとめ
結論として、「マイナ保険証を使えば医療費が安くなる」という情報は誤解を含んでいる。現行制度では、窓口負担は原則として保険証の種類にかかわらず一律化されており、初診時には逆に「医療DX推進体制整備加算」により最大110円の上乗せが生じる場合もある。
しかし、マイナ保険証の真価は利便性や安全性にある。高額療養費制度との連携によって、予期せぬ医療費の立て替えが不要になる点や、診療の質向上、受付対応のスムーズ化など、医療体験全体をより快適にするものである。
今後の医療DXの進展を見据え、マイナ保険証をいかに上手に活用するかが、患者自身の利益にも直結すると言えるだろう。

