高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療費が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される公的医療保障制度である。日本では、健康保険に加入しているすべての人が対象となり、自己負担が過度にならないよう設計されている。
この制度では、1か月間の自己負担額が所得に応じて設定された「自己負担限度額」を超えた場合、その超過分が還付される。自己負担限度額は、年収に応じて異なり、大まかに以下のように分類される。
| 所得区分 | 自己負担限度額(3割負担の場合) |
|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 約252,600円 + (医療費 – 842,000円)×1% |
| 年収約770万~1,160万円 | 約167,400円 + (医療費 – 558,000円)×1% |
| 年収約370万~770万円 | 約80,100円 + (医療費 – 267,000円)×1% |
| 年収約370万円以下 | 約57,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 約35,400円 |
また、同じ月内に一定の自己負担額を超える場合、「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに引き下げられる。
問題になっている高額療養費制度の改悪案
近年、高額療養費制度の見直しが議論されており、特に自己負担限度額の引き上げが検討されている。財政負担の増加を背景に、政府は制度の持続可能性を確保するために改革を進めている。
主な改悪案として、
- 自己負担限度額の引き上げ:特に高所得者層の限度額が増加する可能性がある。
- 多数回該当の基準の変更:短期間での繰り返しの利用に対する制限強化。
- 低所得者向け支援の縮小:住民税非課税世帯への負担増加が議論されている。
これにより、退職後に医療費負担が大幅に増える可能性があり、特に国民健康保険(国保)に移行する人々にとっては影響が大きい。
退職後すぐの高額療養費
退職後、健康保険の切り替えが発生し、多くの人は勤務先の健康保険から国民健康保険(国保)へと移行する。この際、前年の所得に基づいて国保の保険料が決まるため、退職直後は高額な保険料を支払うことになる。
高額療養費制度の自己負担限度額も、前年の所得を基準に計算されるため、退職後すぐに大きな医療費が発生すると、現役時代と同じ高い自己負担額が適用される可能性がある。
前年所得基準の影響が1年以上続く可能性
退職後の国保の保険料や高額療養費制度の自己負担限度額は、前年の所得を基準に決定されるが、これは退職後1年間だけではなく、1年以上続くことがある。
なぜ1年以上続くのか?
- 国保の保険料は「1月~12月の前年所得」を基準に算出され、徴収スケジュールによって翌年2月や3月まで支払いが続くことがある。
- 例えば2023年10月に退職した場合、2024年12月までは2023年の所得基準で計算され、さらに2025年2月頃まで保険料の支払いが発生する可能性がある。
- これにより、退職後すぐに収入がなくなったにもかかわらず、高額な保険料と高い自己負担限度額が適用される。


私の場合、退職した年の翌々年の2月まで支払いが続いた。
具体的な影響の例
- 退職前年の年収が800万円だった場合:高額療養費制度の自己負担限度額は約167,400円。
- 退職後、収入がなくても前年の所得基準が適用:退職後すぐの医療費負担が重くなる。
- 国保の保険料も高額に:退職直後は前年所得を基に計算されるため、翌年2月や3月まで支払いが続く可能性がある。


私の場合、今のところ高額な医療費を支払わないといけないような大病は患っていないが、退職して無職になる場合は盲点になりやすい点なので注意が必要だ。
対策として検討できること
- 退職前に健康保険の「任意継続」を検討する。(2年間は退職時の社会保険の保険料で維持可能)
- 退職時に、医療費の見込みを把握し、国保と任意継続のどちらが有利か比較する。
- 退職後すぐに大きな医療費がかかる可能性がある場合、支払い計画を立てる。
このように、退職後の国保の適用期間は単純に1年間ではなく、退職時期によっては1年以上前年所得の影響を受ける可能性があるため、事前の準備が重要となる。


まとめ
高額療養費制度は医療費負担を軽減するための重要な制度であるが、退職後すぐの適用においては注意が必要である。特に、前年の所得が基準となるため、退職直後に医療費が発生すると自己負担額が高くなる可能性がある。
また、政府による制度改正が進められており、自己負担額の引き上げや低所得者支援の縮小が検討されている。今後の制度変更を注視しながら、退職前に健康保険の選択肢を確認し、適切な対策を講じることが重要である。
退職後の医療費負担を軽減するために、事前に制度を理解し、賢く活用することが求められる。

