はじめに
2025年8月、立憲民主党などの野党が「ガソリン税の暫定税率を廃止する法案」を国会に提出した。普段から自動車を利用している家庭にとって、ガソリン代の高騰は大きな家計負担である。今回の廃止法案が成立すれば、ガソリン価格が下がり、家計が助かると期待する声が多いだろう。しかし、実際にどれほどの効果があるのかを正しく理解している人は少ないのではないだろうか。
本記事では、暫定税率の仕組みを解説したうえで、廃止された場合にどのくらいガソリン代が下がるのかを独自の試算で示す。さらに、制度変更に伴う市場の混乱の可能性や、家計管理にどう活かすかといった視点まで幅広く考察する。
ガソリン税の暫定税率とは?
ガソリン税は、ガソリン1リットルあたりに課される税金であり、その内訳は「本則税率」と「暫定税率」に分かれる。暫定税率は1974年のオイルショック後に導入された。道路整備を目的とした一時的な増税措置だったが、そのまま恒久化され、現在では一般財源としても活用されている。
- 本則税率:約28.7円/L
- 暫定税率:約25.1円/L
- 合計:約53.8円/L
つまり、ガソリン代の中にはリッターあたり25円前後の「上乗せ分」が含まれている。もしこれが廃止されれば、ガソリン代は大幅に下がることになる。


一時的なはずの暫定税率が半世紀以上続いている事実は、制度の硬直性を象徴しているように感じる。
暫定税率廃止でどれくらい安くなる?
ここからは独自に前提条件を設定して試算してみよう。
前提条件(独自設定)
- ガソリン価格:165円/L(2025年夏の全国平均を想定)
- 1世帯の利用量:月60L(週1回満タン給油、1回15Lを想定)
- 年間利用量:720L
試算結果
- 値下げ幅(1か月):60L × 25.1円 ≒ 1,506円
- 年間削減額:1,506円 × 12 ≒ 18,072円
年間で約1万8,000円の削減効果があり、これはタイヤ交換1回分や、自動車保険料の一部を賄える水準である。地方で車が生活必需品となっている家庭にとっては、軽視できない額だ。
さらに車2台持ちの家庭では、単純計算で年間3万6,000円以上の削減が可能になる。これを教育費や旅行費に充てれば、暮らしの質に直結する効果が生まれる。


月1,500円の節約でも、積み重なれば確実に生活の余裕につながる。年間ベースで考えることが家計管理では重要だ。
地域やライフスタイルで変わる影響
都市部と地方では、車の利用頻度に大きな差がある。都市部では公共交通機関の利用が中心であり、ガソリン代が家計に占める割合は比較的小さい。一方、地方では通勤や買い物、子どもの送迎まで車に依存するケースが多く、ガソリン代の負担感は都市部の数倍に達することもある。
例えば、地方在住で月100Lを消費する世帯の場合、暫定税率廃止による削減額は年間3万円を超える。この金額は1泊2日の家族旅行費用や、冷蔵庫の買い替え資金に相当する。つまり、影響度は生活スタイルによって大きく変わるのだ。


地方と都市の違いを考えると、同じ政策でも受け取られ方に温度差があるのは当然だろう。


ガソリン価格が急に下がると混乱する?
制度が施行された直後にガソリンが大幅に値下がりすると、給油所での混雑や「買い控え」の問題が懸念される。実際に過去の補助金導入時には、給油を先送りする動きが見られたことがある。こうした事態を避けるため、政府は段階的に補助を拡充するなど、価格変動を緩やかにする措置を検討している。
また、ガソリンスタンドは地域インフラとして重要だが、経営基盤が脆弱な店舗も多い。価格変動が急激すぎれば、経営に悪影響を及ぼし閉鎖が進む可能性もある。そのため制度設計には市場と現場双方への配慮が不可欠である。


安くなること自体は歓迎だが、供給網が揺らぐようでは長期的にはマイナスになる。調整の妙が問われる局面だ。
家計にどう活かす?
節約できる金額をどう使うかが重要である。例えば、浮いた1,500円をそのまま消費に回すより、積立投資や教育費、老後資金に充てれば長期的な効果が高い。年間1万8,000円を利回り3%で20年間運用した場合、約43万円にまで膨らむ計算となる。単なる節約ではなく「将来の資産形成」につなげることができるのだ。
また、燃費改善やカーシェアの活用といった工夫を組み合わせれば、節約効果をさらに高められる。暫定税率廃止はあくまできっかけであり、生活全体の見直しと組み合わせることで、より大きな成果につながる。


削減分を「消えるお金」にせず、「残るお金」に変える発想が大切だ。
まとめ
ガソリン税の暫定税率は当初一時的措置だったにもかかわらず、半世紀以上にわたって維持されてきた。もし廃止されれば、ガソリン代は1リットルあたり25円前後下がり、平均的な家庭で年間1万8,000円程度の節約効果が見込まれる。地域やライフスタイルによっては3万円以上の効果も期待できる。
ただし、価格急落による市場の混乱やガソリンスタンド経営への影響も懸念されるため、段階的な調整措置が導入される見通しだ。今後の国会審議と制度設計を注視しつつ、ガソリン代の変化を家計改善のきっかけとして活用することが重要である。
本記事で示したように、暫定税率廃止は単なる節約にとどまらず、資産形成や生活改善の出発点にもなり得る。変化を前向きに取り込み、賢い家計運営につなげたい。

