iDeCoと企業型DC、それぞれの特徴を比較する
iDeCo(個人型確定拠出年金)と企業型DC(企業型確定拠出年金)は、いずれも公的年金に上乗せして老後資金を積み立てる制度であるが、その設計思想や活用方法には明確な違いがある。iDeCoは個人が自ら加入し、自由に金融機関を選んで積み立てを行えるのに対し、企業型DCは企業が導入し、一定のルールのもとに従業員が加入する形となる。
iDeCoは任意加入であり、特定の勤務先に依存しないため、転職や退職をしても制度を継続できる柔軟性が魅力だ。一方で、企業型DCの中には「マッチング拠出」という、企業の拠出に上乗せして個人が追加拠出できる仕組みも存在する。
これまでは企業型DCに加入している場合、iDeCoとの併用には企業の制度規約が障害となることも多かった。しかし2024年12月の制度改正により、「iDeCoを禁止する」明確な規定がない限り、原則併用が可能となった。ただし、マッチング拠出とiDeCoの併用は依然として認められておらず、いずれかを選ぶ必要がある。
iDeCoのメリットとデメリット
メリット
- 金融機関を自由に選べ、商品ラインナップの幅が広い
- 低コストのインデックスファンドを選択可能
- 所得控除、運用益非課税、受取時の税優遇といった強力な節税効果
デメリット
- 加入時に2,829円の手数料が必要
- 毎月171円以上の管理手数料がかかる(金融機関により異なる)
- 手続きや控除証明書の管理など、煩雑な対応が必要


自由度と節税メリットを活かせるiDeCoだが、コストや手間も無視できない。長期的に運用することでその差は相殺可能であるものの、制度を理解せずに加入すると期待したリターンが得られない可能性もある。


マッチング拠出のメリットとデメリット
メリット
- 勤務先が制度運営しており、手続きの負担が少ない
- 口座管理手数料が基本的にかからない
- 一時的に拠出を停止してもコストは発生しない
デメリット
- 金融商品の選択肢が限られ、低コストファンドが選べない場合もある
- 信託報酬が高い商品を含むことがある
- 会社の掛金が低いと、自身の拠出枠も制限される
例えば、会社が毎月1万円を拠出している場合、マッチング拠出として個人が追加できるのも1万円までに制限されるケースが多い。iDeCoなら2万円まで拠出可能なため、より多く積立したい人にとっては選択肢が狭まる。
制度改正でどう変わる? 最新動向を押さえておこう
2024年12月と2025年6月の制度改正は、確定拠出年金制度に柔軟性と利便性をもたらした。
2024年12月の主な改正点
- 企業型DCの掛金上限見直し:他制度との併用でも5.5万円まで拠出可能に。
- iDeCoの掛金上限引き上げ:DB併用でも月額2万円までOK。
- 事業主証明書の廃止:iDeCo加入時の事務負担が軽減。
2025年6月の改正内容
- 企業型DCの上限引き上げ:月6.2万円まで可能に。
- iDeCoの上限引き上げ:第2号被保険者で最大6.2万円まで拠出可能に。
- iDeCoは70歳まで拠出可能に:老齢年金を受け取っていなければ拠出継続OK。
- マッチング拠出の上限撤廃:個人の掛金が会社を上回っても可。


制度は拡充傾向にあり、これから加入を考える人にも追い風が吹いている。
どう選ぶ? iDeCoとマッチング拠出の使い分け
iDeCoとマッチング拠出は、以下のような観点から比較検討すると選択しやすい。
勤務先制度の有無と中身を確認する
- マッチング拠出が使えないならiDeCo一択。
- 導入されていても、商品ラインナップが貧弱ならiDeCoが有利。
掛金の上限で比較する
- 拠出余力がある場合はiDeCoの方が多く積立できる可能性がある。
投資商品の自由度
- 自分で運用商品を選びたいならiDeCoが向いている。
手間とコストのバランス
- 手続きの手間をかけたくないならマッチング拠出。
- 長期投資で手数料も重視するならiDeCo。


筆者はiDeCoを活用していた。外国株式インデックスへの投資を重視していたため、企業型DCの限られた選択肢では物足りなかった。実際、当時選択したインデックスファンドは年平均リターン10%を超え、退職時点で運用資産の一部として大きく貢献してくれた。
まとめ
iDeCoとマッチング拠出、どちらが有利かは一概に決められない。判断のポイントは、「どれだけ自分の裁量で資産運用したいか」「どこまで制度の手続きや管理に手間をかけられるか」「拠出限度額を最大限活かせるか」にかかっている。
- 自由に商品を選びたい、低コスト運用にこだわるならiDeCo
- 手続きの簡便さと企業補助を活用したいならマッチング拠出
- 制度改正により、どちらも今後さらに柔軟性が高まる見通し
制度は知ってこそ使いこなせる。大切なのは「制度理解」と「柔軟な活用」であり、最適な選択肢は人それぞれである。老後資金の準備に向けて、自分に合った制度を見極めていこう。
将来への備えは、今の一歩から始まる。その一歩を、自分の判断で踏み出せるようにしておきたい。

