本記事では、筆者がどのようにして総資産として約9,000万円に到達したのかを時系列で振り返ることにした。
もちろん、巷で話題となる“億り人”のようなインパクトのある成功例ではない。だが、逆に言えば、凖富裕層(おおむね5,000万円〜1億円の資産保有層)に該当する水準は、再現可能性や実生活とのバランスの面で、より多くの人にとって現実味があるのではないかと考えている。
目立つ成功や派手な手法ではなく、平凡な会社員が収入と支出の最適化、投資の積み重ねを通じて資産を築いていく過程にこそ、学びがあると信じている。
確定拠出年金しかやっていなかった時代
筆者が本格的に投資に取り組むようになる以前、2012年までは企業型の確定拠出年金のみを運用していた。投資信託の選定はしていたものの、積極的な資産形成というよりは、制度に従って淡々と拠出し運用していただけの状態である。年収も平均的で、余剰資金がほとんどなかったため、投資への意欲や戦略性は乏しかった。
2012年の転機と投資への意欲
2012年に2級ファイナンシャル・プランニング技能士の国家資格を取得したことにより、筆者の人生は少しずつ前向きに動き出す。本業とは何の関係もない資格だったが、ファイナンス全般に対する興味が沸き、住宅ローンや保険の見直し、節約や投資などに積極的に取り組むようになっていった。


2012年、アップル株への一括投資
2012年8月、筆者は手元にあった全資産の現金330万円のうち、生活防衛資金として100万円を残し、残りの約230万円を米国アップル社の株式に一括投資した。その後は特に買い増しなどはしていない。
なぜアップルだったのか。それは単純に、筆者が長年アップル製品の愛好者であり、企業としての将来性に対して強い信頼と期待を抱いていたからである。もちろん、投資判断には根拠が必要であるが、このときは「好きな企業に投資する」という非常に原始的な動機が出発点となっていた。
老後2000万円問題とインデックス投資の開始
2019年6月、「老後2000万円問題」が世間で大きな話題となった。この報道をきっかけに、筆者の中で将来の生活資金についての意識が一気に高まった。
そこで2019年8月、旧つみたてNISAで楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)への積立投資を満額で開始することにした。選定理由は、S&P500よりも投資対象が広く、分散効果が高いと考えたこと、そして当時楽天経済圏をフル活用していたため、ポイント還元などのメリットが享受できたからである。
2017年に転職して年収が大幅にアップし、余剰資金が徐々に増えている状況だったこともあり、2021年11月からは年2回のボーナスおよび年1回のストックアワード(無償で会社の株式が翌年に分配される制度)の大半を特定口座で楽天・全米株式インデックス・ファンドに対して都度一括投資してきた。


節約にも意識を向け、日々の支出を見直すことで投資余力を確保。2021年1月よりiDeCoにも上限いっぱいまで拠出を行うようになった。
株式市場の上昇と資産の増加
2012年から2023年までの数年間、リーマンショックの後だったこともあり、世界的な株式市場は大きな暴落を避けながら着実に上昇を続けた。もちろんコロナショックなど一時的な下落局面はあったが、保有し続けることで資産は拡大していった。
特にアップル株の値上がりは筆者の資産形成に大きく寄与した。購入当初からの株価上昇に加え、配当再投資や株式分割の恩恵も受けることができ、アップル株だけで3,000万円を超える含み益を得るに至った。
2023年8月時点での資産構成は以下の通りである。
- アップル株:3,280万円
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド:1,550万円
- 旧NISA:250万円
- 旧NISA(妻名義):110万円
- iDeCo:610万円
- 現金:410万円
合計で約6,200万円まで成長していた。
リスク分散のためのApple株売却とリバランス
2023年8月、筆者はポートフォリオのリスクを下げるため、アップル株のうち100株だけを残して売却し、得られた約3,000万円をeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に移した。これにより、個別株中心の運用から、インデックス投資比率を高めた形となった。
以降、ポートフォリオの大きな変更は行わず、2023年11月から2024年6月まで上昇傾向が連続して続いた影響もあり、運用益だけで毎月約350万円ほどのペースで増えていった。退職に伴い、2023年12月より旧つみたてNISAおよびiDeCoの積立は中止してしまったが、それでも、ほったらかし運用で2024年12月には金融資産がついに9,000万円に到達した。
総資産としての9000万円
ただし、金融資産が9,000万円であっても、筆者には約2,000万円の住宅ローン残高がある。その一方で、所有している実家の不動産価格が同程度(2,000万円相当)であるため、それを相殺すると、トータルで9,000万円の「総資産」を有していると考えることができる。
2025年、トランプショックと資産の減少
2025年に入り、トランプ氏の政界復帰に伴う市場の混乱、いわゆる「トランプショック」により株式市場が軟調となった。その影響を受け、筆者の資産も一時的に8,600万円ほどまで減少した(2025年7月現在)。


あくまで数値は一時的なものであり、基本方針は変えず長期保有を続けている。
退職と資産取り崩しの開始
本来は完全FIREのため、資産が1億2500万円に到達してから億り人になって退職する計画であったが、2023年後半に病気を理由にやむを得ず退職を早めることになった。以降、生活費は傷病手当金と預貯金から賄ってきた。これまでの資産形成があったからこそ、収入が途絶えても安心して療養できたのである。


2025年7月からは失業給付金の受給が始まるが、傷病手当金よりも支給額が下がったため、いよいよ資産の取り崩しが必要になってきた。どのように資産を取り崩していくかについては、別記事にて詳述する予定である。
まとめ
筆者が資産を9000万円まで増やすことができたのは、次のような要因が大きい。
- 2012年の2級ファイナンシャル・プランニング技能士の取得
- アップル株や全米株式インデックス・ファンドなど、成長性のある資産への集中投資
- 特にアップル株の大幅な値上がりが資産全体の成長をけん引
- 2017年の転職後の年収アップ
- 旧NISAやiDeCoなどの制度をフル活用
- 節約による投資資金の捻出
- コロナショックを含む複数の下落相場を乗り越えたことで得た含み益
さらに言えば、「運が良かった」と言える部分も否定はできない。大きな暴落がなかったこと、保有銘柄の値上がりなど、外部環境の恩恵を受けた点は多々ある。
それでも、投資の種をまき、日々の家計を見直しながら育ててきた努力があったからこそ、約12年間で330万円から9000万円という結果につながったのである。
今後は、取り崩し期における運用戦略が重要になる。その模索と実践もまた、本ブログを通じて発信していく予定である。

