はじめに
自営業やフリーランスとして働いていると、ある日「国民年金基金への加入をご検討ください」というレターが届くことがある。見慣れない制度名に戸惑い、「加入した方がいいのか、それとも他の制度を選んだ方がいいのか」と迷う人も多いだろう。老後資金の確保はFIREを目指す人に限らず誰にとっても重要な課題であり、その手段として国民年金基金は公的に認められた選択肢のひとつである。
本記事では、国民年金基金の仕組みやメリット・デメリットを整理しつつ、iDeCoとの比較や筆者の考え方も交えて詳しく解説する。
国民年金基金とは?
国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど第1号被保険者が加入できる公的な上乗せ年金制度である。日本の公的年金制度は2階建ての構造になっており、第2号被保険者(会社員、公務員)は厚生年金に加入しているが、自営業者などは基礎年金のみである。そのため、老後に受け取れる年金額は相対的に少なくなる。これを補う目的で設けられているのが国民年金基金だ。
掛金は全額が社会保険料控除の対象となり、税制面でのメリットもある。終身年金型の仕組みを備えているため、長生きリスクに備えたい人にとって一定の安心感をもたらす制度である。


制度としては確かに合理的に設計されているが、選択の余地が広がった現代においては、他の制度と比較してから判断することが望ましい。
メリット
税制優遇
国民年金基金の掛金は全額が社会保険料控除の対象である。所得税と住民税の負担を軽減できるため、節税効果を実感しやすい。特に所得が高い人ほど税率が高いため、控除のメリットも大きくなる。
公的制度の安心感
国民年金基金は国の制度として運営されているため、破綻リスクが極めて低い。民間の保険商品と比べても信頼性が高く、「必ず受給できる」という点は魅力のひとつである。
終身年金
選択できる年金の種類には終身型が含まれており、長生きした場合でも生涯にわたって年金を受け取れる。長寿化が進む日本では、老後資金が尽きるリスクを和らげる役割を果たす。


筆者コメント:税制優遇と終身給付の安心感は確かに強力であり、特に「長く働いた後は安定した年金を」と考える人には適した選択肢となりうる。
デメリット
流動性の低さ
国民年金基金は一度加入すると原則として途中解約ができない。そのため、万一まとまった資金が必要になった場合でも取り崩すことはできない。流動性が低い点は大きな制約である。
インフレリスク
国民年金基金の給付額は基本的に固定的であり、インフレによる物価上昇が長期的に続くと、実質的な購買力が目減りするリスクがある。現代の低金利・物価変動環境を考えると、この弱点は軽視できない。
制度改正の影響
公的制度であるがゆえに、将来的な制度改正の影響を受ける可能性がある。給付水準や条件が変更されることもあり、長期にわたり確実性を保てるとは限らない。


最大の難点は「途中でやめられないこと」と「インフレに弱いこと」である。長期の資産形成においては、この2点が意外に大きなリスクとなる。


iDeCoとの比較
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自営業者・会社員を問わず利用できる私的年金制度である。国民年金基金と同じく掛金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税である点は共通している。しかし決定的に異なるのは「運用を自分で選べる」という点だ。株式、債券、投資信託など多様な商品を組み合わせ、インフレに強いポートフォリオを構築できる。結果として長期的な実質利回りを高めやすく、資産形成の自由度が大きい。
iDeCoのメリット
- 運用商品を自由に選べるため、インフレヘッジが可能。
- 運用次第で高い利回りを期待できる。
- 掛金は全額所得控除、運用益非課税、受け取り時控除と三重の税制優遇がある。
iDeCoのデメリット
- 原則60歳まで引き出せないため、こちらも流動性は低い。
- 投資商品を自分で選ぶ必要があり、知識や経験が求められる。
- 運用結果によっては元本割れのリスクがある。


筆者自身はiDeCoを選択している。理由は、資産配分を自分でコントロールできる点と、インフレに対応しやすい点である。長期的にみて、購買力を守れる可能性が高いと判断している。
どちらを選ぶべきか
結論としては「安定か柔軟か」の違いに尽きる。国民年金基金は終身年金という安心感がある一方で、インフレに弱く流動性が低い。iDeCoは運用リスクを伴うが、インフレに対応しやすく成長性も見込める。自営業者にとっては、老後資金を固定的に確保する国民年金基金と、運用自由度の高いiDeCoを組み合わせる方法もあるだろう。


筆者の立場としては、資産形成の主力はiDeCoに置き、国民年金基金は補完的な位置づけと考える方が合理的だと思う。
実際に届いたレターへの対応
国民年金基金からのレターは、制度の存在を周知する目的で送られてくる。必ず加入すべきものではなく、内容をよく理解して判断することが重要だ。安易に加入してしまうと「やめられない」というデメリットに直面する可能性がある。まずは自分の家計状況や老後のライフプランを見直し、その上で本当に必要かどうかを考えるべきである。


レターが届いたからといって焦る必要はない。制度を理解した上で、自分の投資スタイルに合わせて判断すれば良いのである。
まとめ
国民年金基金は自営業者やフリーランスに向けた公的な上乗せ年金制度であり、税制優遇や終身年金といった強みを持つ。しかし流動性の低さやインフレリスクという弱点も抱えている。対してiDeCoは自ら運用商品を選べる柔軟性があり、長期的な資産形成に適している。筆者としては、より実質利回りを高めやすく、購買力を維持しやすいiDeCoを推奨する。加入を検討する際には、国民年金基金からのレターに流されず、自分のライフプランと投資スタイルに合った制度を選択してほしい。

